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MB-302『非国民文学論』田中綾 単行本 [ 青弓社]
ハンセン病を理由に徴兵されなかった病者、徴兵検査で丙種合格になった作家、さまざまな手段で徴兵を拒否した者――。総動員体制から排除された戦時下「非国民」の短歌や小説を読み込み疎外感と喪失感を腑分けし、そこから生じる逆説的な国民意識を解明する。
「非国民文学」とは何か。近代日本が成立して登場した「国民」という概念を前提に、「国民ではない」と見なされた文学者を取り上げて、作品と生きざまを検証する。
「非国民」の概念を身体性と精神性の双方から考察するため、「国立療養所」としてのハンセン病療養所に着目して、「国立」と「非国民」とを検討する。
戦時下では身体的に「非国民」とされた療養者が、精神的には総力戦を見守る「国民」の立場にもあったという逆説的な短歌を紹介する。
リアリティーあふれる闘病歌が高く評価されたが、その歌人の内面はアンチリアリズム志向だったという逆説的な作品を、2・26事件歌もあわせて例証する。
さらに、金子光晴の家族詩集と丸谷才一の小説も素材にし、戦時下に「徴兵忌避」を選んで身体的自由を得ようとした男性が、戦中も戦後も定住できずに、むしろ身体的不自由を負うことになったという逆説的な展開を解明する。
総動員体制から排除されて「非国民」とレッテルを貼られた文学者の精神の自由に光を当てる。
(青弓社公式サイトより引用)